【コラム】どうにも弁当がうまく作れない!

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フライパンをがしゃんと鳴らしてコンロに置いた。
サラダ油をなじませて、カチリと強めの火にかける。卵をふたつボウルに割って、さっと調味料を加えたら、菜箸で手早くかき混ぜる。
ボウルを傾け、おもむろにフライパンへと流し込めば、じゅわっと音を立てながら、風にたなびくスカーフのように、黄色い帯が踊りはじめた。

最近は昼食代を節約するため、毎朝弁当を作っているの。
オカマの家計は常に、押しよせるアルコールの大波にひっ迫されているのよ。
昨年に引っ越してからというもの、台所の使い勝手が飛躍的によくなったから、つい料理をしたくなるのも弁当を作る理由のひとつね。
以前の台所はとにかく狭くて、収納は少なくて、コンロもひとつしかなかったの。
私は昔から快適な環境を手に入れると、その快適さを全身で享受しなければ気がすまないタチなのよ。
小学生のころ、自転車を買ってもらった日には市内を50km以上走り続けたし、中学生のころは新調した布団で15時間も寝続けたことがあったわ。
アラサーのオカマとなった今でも、10代のころと本質は何も変わっていないの。

弁当を作るようになって変わったことと言えば、以前より1時間も早起きをするようになったことね。
朝の1分は貴重で、夜の10秒と同じ体感速度で時が進むわ。
早起きは三文の得って言うけど、現代の貨幣価値に置き換えると100円程度と聞いたことがあるから、費用対効果を考えれば夢の中でイケメンのハーレムを堪能していたほうがマシね。
でも、以前はベッドから飛び起きてすぐに、逃げるように家を出ていたけど、今は冷蔵庫の残り物から弁当の献立を考える時間が楽しみでならないわ。
「今日は部下に昼飯をおごらなくていい」という安心感と、”自作の弁当”という圧倒的な女子力を周囲に知らしめる優越感で、朝からつい口元がゆるんでしまうの。
そう思うと、早起きで三文以上に財布と心の余裕を得ているようにも思えるわね。

そんな順風満帆に思える弁当づくりだけど、実は当初から大きな問題が発生し続けているの。
時間をかけて作る割に、自分でも驚くほどマズいのよ。冷めても美味しい料理を計算して作ることができないの。
先日はレシピ本を参考に「鶏肉のキムチ牛乳煮込み」を作ってみたけど、とてもオフィスで食べられるようなシロモノじゃなかったわ。
せめて見た目だけでもきれいに飾りたくて、料理が趣味のオカマ仲間にアドバイスを求めると「キャラ弁でも作ったら?」と言われて挑戦したこともある。
オムライスでピ◯チュウを作ったのだけど、いざ弁当箱を開けると、顔面のパーツである海苔が蓋の裏にすべてくっついていた上に、玉子が破れて、真っ赤なケチャップライスが箱中に散乱していたわ。
ゾンビ映画としては100点だったけど、見た目も味も、弁当としては0点だったわ。

それでも私は、どうにか「冷めても美味しいお弁当」を作りたいのよね。
朝早くから時間に追われて、おかず作りに四苦八苦していると、どうしても思い出すのが母の弁当よ。
高校生のころ、母は毎日昼食に弁当を持たせてくれたの。
春夏秋冬、 弁当箱は色とりどりの主菜副菜に彩られて、1日たりとも同じ組み合わせのおかずはなかったように思う。

時計の針が12時を指して、淡黄色のカーテンがたなびく教室に、昼休みを告げるチャイムが鳴り響くころ。
クラスの鼻つまみ者だった私は、唯一の友人であり親友である悪友と、たったふたりきりで弁当を食べるのが習慣だったわ。
毎日ふたりでおかずを交換していたのだけど、中でも母の作った玉子焼きは、いつもすこぶる評判がよかった。
反抗期の真っ只中に肉親の手料理を褒められるのは恥ずかしくもあったけど、内心、母親が誇らしくもあったわ。

誰よりも早く起きて、息子たちの弁当を作り、家族全員分のご飯を準備して、共働きであったから、そこから化粧の支度をはじめていた母。
昔、寝ぼけまなこでトイレに立つと、陽も覗かないインクブルーの早朝に、リビングの扉の隙間から洗濯物をたたむ母の姿を見たこともある。
朝の1分は貴重だけど、母はその時間を、何十時間、何百時間と家族のためだけに費やしてくれていたのよ。
おかげで社会人になった今でも、私は冷えきったご飯とおかずが大好きなの。めいっぱいの愛情が、冷たい弁当箱の中に詰まっていたから。

時計の針が12時を指して、 次第にキーボードの音が止み、同僚たちが各々ランチへと出かけるころ。
がらんとしたオフィスの静寂の中で、弁当箱の蓋をゆっくりと開ける。
いいわ、今日は形が崩れてない。均一に並んだ黄金色が食欲をそそって、すぐにでも手づかみでかじりつきたいくらいだわ。
箸を親指にはさみ、小さく合唱をして、一番切り口の美しい玉子焼きを箸先でひょいとつまみ上げる。
ぷるぷるとした、ほどよい弾力に誘惑されているようで、たまらず口に運んだわ。
ふわっ、じゅわっ、ガリッ。
今日は卵の殻入りか。あと何十時間、何百時間と練習しても、とてもあの味には追いつけそうにないわね。

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○BSディム プロフィール○
昼は真面目な係長、夜は不埒なオカマです。普段はブログやツイッターでブツブツとオカマ仲間への文句を言っています。普段の家事もブツブツと文句を言いながら何とかこなしていますので、その様子を無理やり皆さんにお届けしたいと思っています。

写真:フリー写真サイト・Photo AC

文:

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