【コラム】おもしろいおばちゃんを攻略する話

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子どもは何かと手伝いたがる。妻がボウルを持ってくれば「混ぜたい!」と言うし、掃除機のスイッチを切ると「フィルター綺麗にしたい!」と言う。
こんなに働きたいの塊みたいな生命体って他にあって? 子どもの手伝いたがりをうまいこと活用すれば労働力が増え、大人は遊んで暮らせるのではないか。最初は「混ぜる」「フィルターを綺麗にする」程度の単発の仕事かもしれませんが、しっかりと訓練すれば「世界中に支店があってもシンプルに利用できる会計システムを構築する」「太平洋の水温と漁獲量について調査し環境保護とビジネスの妥協点を見つける」みたいな仕事ができるようになると思います。よくよく考えればそれが教育でした。普通の話をしてしまいました。どうもありがとうございます。

さて、話を戻しますと、幼児の「手伝いたい!」は、単に「おもしろそう!」というだけですので、戦力にならないことが非常に多い。妻からボウルを奪ってかき混ぜ始めるも、なんかちょいちょいこぼし、途中で飽きる。掃除機のフィルター掃除も、真の目的はフィルターを取ったときに露出するモーターのほうで、スイッチをオンにして、ファンが「ブォォォォォン!」と回って綿ぼこりが舞うのを見て、キャッキャしている。ああ、せっかく溜めた埃が……。しかし、本来この世界は乱雑な方向へ進むのである。エントロピー増大の法則は真理であるので、宇宙は息子のほうを味方する。息子は宇宙に愛されている。

何の話だっけ。うちゅう? そう、子どもの手伝い。この「飽きる」「真の目的が別にある」という特性を理解しないまま、幼児の手伝いの申し出を受け止めると、大変なことになる。基本、戦力外なんです。

しかし、そんな息子をどうしても戦力にしたいときがありまして、それが朝のゴミ捨て。
園バスの停留所まで息子を送りに行くのは私の仕事ですが、ついでにゴミ袋を持っていくのも私の仕事です。ゴミ袋は2、3個あったり、段ボールの束などもあったりするので、通常は2往復必要なことも。でも、息子が持ってくれるのならば、送りに行くついでに事が済むわけです。そして、わたくし、そのまま仕事に行けるのです。なんとしても、息子にゴミを持たせたい。

「ゴミ持つ?」と聞くと、興味深そうに「持つ~!」という息子。ここまでは簡単です。
ただ現実はそう上手くいくはずもなく、1階の玄関でゴミ袋を俺の方に向けて「持って~」という息子。えー? 今言う!? ここで飽きる!?
でも、俺もこれ以上持てないので、ほんと申し訳ない、ほんと申し訳ないですが、娘のおむつがパンパンに入った袋が、共同玄関に一定期間存在しました。時間にしておよそ1分だと思いますが、その間、この建物の価値は3分の1くらいになっていたと思います。グラフだとガクーン!ってV字になってたと思います。このタイミングで購入出来た人はラッキーでしたね。

さて、息子を戦力にするには「飽きる」「真の目的が別にある」という特性を「ハック」する必要があります。息子研究家を自称する私にかかれば、それほど難しいことではありません。今回は、「ゴミ捨て場の鍵」を使いました。フックを穴に通すだけの簡単な仕組みの鍵なのですが、こういうのでも子どもって面白がるんですよね。ゴミを最後まで持ってくれたら、これを開けさせてあげることにしました。

さて、これで円満解決かと思ったのですが、まったく想定外の問題が発生しまして。

息子とゴミを持ってエレベータを降りているとき、途中の階からおばちゃんが乗ってきたんですね。この人が、なんていうんですかね、わりと強烈なキャラクターをお持ちで「あいさつは大事~おはようございます~!」って独特のしわがれ声で息子に話しかけてくるんです。文字にすると「おばごうございまずぅ~」みたいな。
いやまあ、あいさつは大事ですけども、あのー、俺もそうですけど、息子は、ぐいぐい来られると、むちゃくちゃ引くんですね。案の定、息子はむちゃくちゃ引きまして。結果的にゴミ捨てが怖くなってしまった。

俺としては、せっかく手に入れた戦力の突然死ですよ。物理的に困る。なんとかおばちゃんを攻略させなければ(主に俺の)未来は無い。というわけで、自分本意のおばちゃん克服プロジェクトが始まりました。

まず、おばちゃんの名称を「おもしろいおばちゃん」にしました。別に「ミシシッピニオイガメ」でもいいんですけど、子どもは絶対に本人に言うから。エレベータに乗ってきたとき「ミシシッピニオイガメ!」って言うから。「おもしろいおばちゃん」なら、多分本人も自覚しているので悪口にならない、かつ子どもにも親しみを持てます。名前をつける、というのは、見え方を規定することです。あのおばちゃんの動作は「おもしろ」なんだな~と、息子の解釈を変えるわけです。

次に、家で「おもしろいおばちゃん」の真似を流行らせました。
プリキュアごっこをしながら突然、「おばごうございまずぅ~キラキラルをよごぜ~」みたいな。こういう不条理なやつ、子どもはめっちゃ好きだから。

最終的には、おばちゃんが乗ってくると「おもしろいおばちゃん出たぁ~!」みたいな。「ご本人登場~!」 みたいな。そんな空気になりまして。良かったな、という話だったんですけど、幼稚園のバスの時間が若干変わり、会うこともなくなってしまいました。

おもしろいおばちゃんに会わなくなってからそろそろ3か月。息子がしわがれ声で「ぐぉじぞうざまでじだぁ~」っていう癖だけが残りました。

 

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○ヤスノリ プロフィール○
1997年からWebサイトを運営しているインターネットの化石です。5歳の息子と、2歳の娘が居ます。普段は、おいしいカレーはなんでおいしいのかな、とか、そういうことを考えています。
 
写真:ヤスノリ

文:

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