2021.04.02 Fri

今すぐ始めたい!ローリングストックで賢く備える

新型コロナウイルス感染症の流行拡大から1年。マスクやアルコール消毒の対策は習慣化された中、地震や災害の備えは充分にできているでしょうか。東日本大震災から10年の節目を迎えた今、改めて防災意識を高め、行動に移したいものです。そこで、少し意識するだけで日常生活に取り入れられるローリングストックについて、防災食のプロに聞きました。

日頃から地震や災害の備えは
どれくらいしている?

地震大国に暮らす私たちにとって、日頃から大地震の備えは欠かせません。昨今は台風が大型化しやすく、大雨の被害も激しさを増しているので、なおさらです。平成29年に実施された内閣府の「防災世論調査」によると、大地震に備えた対策の上位3項目(複数回答)が、「自宅建物や家財を対象とした地震保険(地震共済を含む) に加入している」46.1%、「食料や飲料水、日用品などを準備している」45.7%、「停電時に作動する足元灯や懐中電灯などを準備している」43.3%という結果でしたが、いずれも半数を下回っていました。災害への想像力を高めるためにも、「まずは毎日の生活に防災アクションを取り入れることが大事」と話すのは、管理栄養士であり、防災士でもある今泉マユ子さんです。

ぜひ習慣づけたい
ローリングストックとは?

日常的に行える防災アクションとして、今泉さんがおすすめしているのが「ローリングストック」です。
「ローリングストックとは、備蓄食材を普段から使い回しながら災害に備える方法です。普段の買い物で使ったものを買い足すだけで、防災対策を習慣化できる点が大きな特徴です。『想定外』を生まないためには、被災時を日常生活の中でも意識することがとても大切です。ローリングストックは、家族と一緒に調理や食事をしながら防災の話をするなど、日頃から防災意識を高めることにもつながります。また、非常食を特別なものとして準備しておくと、備蓄したまま賞味・消費期限が切れてしまい、廃棄せざるを得なくなる場合もあります。ローリングストックであれば、食材を無駄にせず普段の食卓に並べることができ、防災食(備蓄食品)のフードロスを防ぐことができます」

知っておきたい
3つのポイント

常温保存可能な加工食品はすべてローリングストックできると話す今泉さん。普段の食事を思い浮かべつつ、使いながら備えられる食材を考えていきます。このとき、以下の3つのポイントを押さえておきましょう。

POINT1
家族の好物や普段から食べ慣れたものを購入する

「非常時に好物やいつも食べ慣れたお味噌汁が一杯あるだけでも、ホッと安心できるものです。特に小さなお子さんがいるご家庭は、どんなときでもお子さんの好きな物が食べられるように備えておいてください。パウチタイプのゼリー飲料は手を汚さずに食べられるのでおすすめです。ゼリー飲料にはエネルギー補給タイプ、アミノ酸やビタミン入り、おやつのゼリータイプなど色々あります。平常時にお子さんに食べさせてみて、好んで食べるようであればちょっと多めに購入して、ローリングストックしてください。わが家では、米、乾麺、もち、缶詰、レトルト食品、フリーズドライ食品、乾物、乾燥野菜などありとあらゆるものをローリングストックしています。すべて家族の好きな味のものばかりです。お陰で昨年急にステイホームになったときもまったく困らなかったですし、足を骨折して3週間ギプス生活のときも困りませんでした」

POINT2
3つの「見える化」でわかりやすく管理する

「備蓄する上で大切なのは、次の“3つの見える化”です。

1.家族に見える化
備えるもの、場所などは家族と共有することが大切。せっかく備蓄していても、自分だけが把握しているのでは、家族を守ることができません。

2.食べ方の見える化
もし災害が起きた時「食べ方がわからない」「口に合わない」では意味がないので、普段から食べ慣れているものを選んで備蓄しましょう。

3.賞味期限の見える化
缶詰を購入したら、見やすい場所にペンで大きく賞味期限を書いておくのがおすすめ。さらに古いものから取り出しやすいように収納しましょう。

収納は、賞味期限ごとに分けるのもおすすめです。我が家では、缶詰は賞味期限ごとに棚を分けています。また、季節ごとに賞味期限パトロールをしてください。お子さんなど、普段料理をしない人が賞味期限パトロールをすることでどこに何があるのかわかり、『家族に見える化』にもなります。賞味期限が3か月先までのものをパトロールしてもらい、出てきたものを集めてそれでお料理を作ってください。そうすれば、ムダなく消費することができます」

POINT3
ガスや電気が止まった場合を想定しておく

「ガスや電気が止まった場合を想定して、カセットコンロとカセットボンベは必ず準備してください。冷蔵庫の食材や乾麺などの調理に必須です。また、過去の被災者の多くは、避難生活の中で“温かい物”を食べたかったと語っています。カセットボンベは1本で約60分〜90分使用可能で、内閣府は15本の買い置きを推進しています。カセットボンベの使用期限は約7年です。ポリ袋、ラップなどにも使用期限があります。食材だけでなく、調理アイテムも普段から使って、ローリングストックをしておきましょう」

日用品もローリングストック

食材だけでなく、シャンプーや歯ブラシなど、日用品もローリングストックの仕組みで管理しておくと安心です。
「買いだめがきく日用品は、災害時に買い占めが発生すると、長期間入手できなくなる場合があります。紙オムツや生理用品などないと困るものや、消費量の多い日用品は、常に2〜3個の在庫を持つなど、一定量のストックを確保しましょう。食材のように賞味期限のない日用品でもしまい込まず、必ず消費して購入する、というように循環させることを意識してください」

災害食は「生きるためだけの食事」でも「我慢して食べる食事」でもないと今泉さんは言います。
「災害が起きた後も体に必要な栄養を確保することはとても大切ですが、それと同時に、心の栄養を摂ることも大切です。自分や家族が好きなものやおいしいと思うものを食べることが、心の安定に繋がります。ローリングストックを難しく考えずに、まずは試してみてください。好きなものを見つけてちょっと多めに買っておき、食べたら買い足す習慣で、どんなときにも『大丈夫』と言えますように」
在宅時間が増え、備蓄食材の増えている今だからこそ、ローリングストックを取り入れるチャンスです。

<教えてくれた人>
管理栄養士・防災士・災害食専門員
今泉マユ子さん
1969年徳島市生まれ、1男1女の母。防災食アドバイザーとして全国で講演、講座を行う。「レトルトの女王」「缶詰の達人」とも呼ばれ、テレビ、ラジオ、新聞、雑誌などで活躍中。著書多数。https://office-rm.com/

写真:

矢部ひとみ

ライター: